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Webに原稿をアップする前の「校正」チェックポイント

紙媒体の落ち込みが激しい、と言われて久しい昨今ですが、それでも書店やコンビニではたくさんの雑誌が売られ続けています。雑誌を手に取ってページをめくってみると、やはり紙媒体には紙媒体の良さがあることも感じるものです。

良い雑誌の記事に感じる「読みやすさ」や、「読んだ後の納得感」「内容の信頼性」のようなものは、何によってもたらされているのでしょうか?

記事をプロのライターが書いているとか、誌面がよくデザインされている、ということももちろんあるのですが、Web媒体との違いで考えると、「十分な校正が行われている」ことも大きな理由だと思います。

今回は、Web媒体にもすぐ応用できる、ライティングの質を高める方法としての「校正」について、お伝えしたいと思います。

「校正」することの重要性

十分に校正をすることは、次の2つの点で重要です。

1 文章の品質を高めることができる

2 誤りから生じるトラブルなどを未然に防ぐことができる

校正は、紙媒体ではあたりまえに行われていますが、Web媒体ではおろそかになっている場合が少なくない工程です。逆に言えば、しっかりと校正をすることで、Web媒体の中で差をつけることができるでしょう。キャリアのあるプロのライターに依頼しなかった原稿でも、きちんと校正することで質を高めることもできます。

紙媒体では、校正はそれ専門の技術を持つプロの校正者に依頼することが普通です。また、大手の出版社や新聞社では社内に専門の部署を設けています。それほど重要な工程であると位置づけられているということです。この背景には、紙媒体の場合、間違いを残したまま印刷され、出版されてしまうと取り返しがつかないということがあります。出版物に間違いがあると、苦情がくるだけでなく、時に訴訟沙汰になることさえあります。反面、Web媒体では、間違いをいつでも直せるという気楽さからか、校正がかなり軽視されていると思います。

しかし、だからこそ、十分な校正を行って高品質な原稿を掲載している媒体には、「プロ感」が感じられます。個人のブログやメールでも、誤字が多いと「なんだかいいかげんな人だな」という印象を受けてしまうものです。間違いの少なさは媒体の信頼性に影響します。

「校正」とは何をすることか? 「推敲」との違いは?

文章が書きあがったら、発表前に書いた文章を見直し、不適切な部分がないかを確認します。このプロセスを校正といいます。

厳密に言うと、本来「校正」とは、活版印刷の時代に、手書きの原稿と活字になったものとに異同がないかをチェックする作業のことを指していました。誤字などを見つけるのは「校閲」という作業で、今でも「校正・校閲」と言ったりしますが、現代では「原稿を読み直してチェックすること」をだいたい「校正」と呼んでいるという理解でいいと思います。

文章を見直すと言っても、校正は「推敲」とは異なります。推敲とは、「文章をより良いものにしようとすること」です。校正は「文章の悪い点を見つけて正すこと」を指します。同じことに思えるかもしれませんが、校正が対象とする「文章の悪い点」とは、ほぼ「誤り」の意味だと考えて構いません。

推敲はその文章に誤りはないけど、より良い文章にするために改善・改良できるところを見つける作業で、校正は文章の誤りを見つけて正す作業です。推敲はした方がいいものの、しなくても差し支えありませんが、校正は必ず行った方が良い、と言えます。

作業としては、「原稿を書き上げた後、読み返して、修正していく」のですから、推敲と校正を同時にやっても構いません。ただし、慣れないうちは、漏れが出ないように、校正でチェックすべき項目(後述)は意識的に、その項目をチェックすることだけに集中して読み返した方が良いかもしれません。

校正作業を行うときのコツ

「記事をアップ前に読み直しているのに、どうしても誤字が減らせない」という人もいるでしょう。校正作業を行うときは、次のような点を意識してみてください。

  • 書き手以外の第三者に目を通してもらう
  • 執筆後、少し時間を置いてから行う
  • ひと文字ずつ指さしてチェックする
  • 音読してみる
  • プリントアウトして読む
  • 校正ツールを利用する

校正は客観的に見る目が大切です。自分では間違いを見つけにくいことも多いので、第三者の力を借りるのが結局は早道ということもあります。予算が許せば、プロの校正者に依頼するのも良いでしょう。自分で行う場合も、書いてから時間を置くことで客観性を得ることができます。弊社では、社内のライターが原稿を書いた場合でも、ライター間で互いに校正をしあうプロセスを踏んでいます。

人間の脳は高性能すぎて、間違いがあっても脳が勝手に補完してしまいます。ネットで話題になった下記の文章を見てください。

 こんちには みさなん おんげきですか? わしたはげんきです。

誤っているのに、なぜか読めてしまうという文ですね。こういう誤りを見つけるのに、ひと文字ずつ指さしていくという方法もあります。手書き原稿と印刷物の異なりを校正していた時代は、文章を最後からさかのぼって見ていくというテクニックも使われていました。声に出して読んでみるのも良い方法です。

ひと文字ずつ指して校正する

また、プリントアウトして読むと間違いを見つけやすいと言われています。モニターはそれ自体が発光しています(透過光)が、紙は照明を反射している(反射光)ため、目に入る光に違いがあり、脳に与える刺激も異なるために、反射光のほうが間違いなどを見つけやすいのだという説があります。

ワードで原稿を書くと、自動的に文章がチェックされてアラートが表示されることがあります。また、メニューの中に「校閲」の機能があって、英文のスペルチェックなどもできるようになっています。ワードの校正機能は、ラフに崩した口語体なども誤りと判定されるなどして、書き手には評判が悪いのですが、ある程度の精度で誤りを見つけてもくれるので、一度、通してみるだけでかなり間違いを減らせると思います。

以下のようなWeb上で文章チェックができるサービスもあるので、合わせて利用すると良いでしょう。

・日本語文章校正をサポート http://www.kiji-check.com/

・Enno http://enno.jp/

校正では何をチェックするべきか

校正の際、チェックしたいのは誤字だけではありません。何に気をつければいいかわからない、というときは、以下のような点を意識してみましょう。

  • 誤字脱字、日本語の誤り
  • 固有名詞、情報の誤り
  • 表記揺れ、表記ルール
  • 注意すべき表現、特に事実関係の確認が必要なもの
  • 避けたほうがいい言葉
  • Webで表記する場合の問題

順に解説していきます。

1 誤字脱字、日本語の誤り

まず、校正の本来の役割である、誤りを見つけることです。以下がそれにあたります。

  • 誤字、脱字
  • 外国語のスペルミス
  • 送り仮名の誤り
  • 用例、漢字の使い方の誤り
  • 文法上の誤り(主語と述語の不一致や「ら抜き言葉」など)
  • 文体の不統一(「です・ます」と「だ・である」の混在)

誤字脱字はいいとして、用例の誤りなどは日本語の知識がないと見つけられないこともあります。「役不足」など、間違いのほうがほとんど定着しているようなものもあります。正しい用例は検索で調べることももちろんできますが、新聞社などから出版されている、用字用語辞典を一冊手元に置いておくと、なにかと役立つと思います。たとえば「変わる/代わる/替わる/換わる」をどう使い分けるかなどは、用字用語辞典に載っています。弊社では、下記の用字用語集を使っています。

記者ハンドブック
記者ハンドブック 第13版 新聞用字用語集(共同通信社)

文体の不統一などは、音読してみると気づきやすいので、おすすめです。

2 固有名詞、情報の誤り

誤字脱字の一種ですが、人名・社名や商品名の誤りは、特に危険なのでよく注意をすべきです。誤字脱字は注意深く読みさえすれば気づくことができますが、固有名詞はそもそも覚え間違いなどをしていると誤りに気づかないからです。

たとえば第97代内閣総理大臣は「安部」さんでしょうか、「安倍」さんでしょうか?

話の引き合いで出した芸能人や歴史上の人物の名前ならまだしも、インタビュー記事で対象の方のお名前を間違えてしまうなどすると、大変失礼ですし、トラブルに発展することもあります。

固有名詞の誤りのチェックは、校正中に固有名詞が出てきたらまず検索してみるクセをつけると良いでしょう。「安部総理」などは間違いでも検索結果に出てきたりしますが、Googleから正しい表記のサジェストが出たり、公式サイトや事典サイトなど比較的信頼性の高いページが上位に出てきますから、間違いに気づけます。

また、取材したときに受け取った名刺やパンフレットなどの紙の資料と引き合わせてチェックするのも良い方法です。社名はいわゆる「前株と後株」も間違えやすいので要チェックです。

これに類するものとして、「価格」や「電話番号」「住所」と言った、やはり誤ると致命的になりかねない情報についても、しつこく確認するクセをつけたいものです。これらも、検索してみることで間違いを見つけやすいです。

電話番号の間違いを見つける非常にシンプルなやり方として、「実際に電話をしてみる」という方法もあります。

3 表記揺れ、表記ルール

「引越」という言葉を「引っ越し」と書いても「引越し」と書いても間違いではありません。間違いではないですが、異なる書き方がひとつの記事の中に混在すると、ちょっと収まりが悪い感じがしないでしょうか。こういう現象を表記揺れと言います。

Web媒体ではそこまで神経質になる必要はないかもしれませんし、SEO的な観点から「引越」と「引っ越し」という両方のワードを入れたい、みたいな向きもあるかもしれませんが、紙の出版物であれば表記の統一は基本です。そのため、出版社では媒体ごとに表記ルールを設けていることがほとんどだと思います。

表記揺れが起こりうるすべての表現について、あらかじめルール化するのは大変ですが、媒体のテーマから考えて頻出する用語の表記については、ルール化しておくとよいでしょう。たとえば自動車保険について扱っているなら「見積り」「見積」は「見積もり」に統一する、などです。

一般的な表現でも、たとえばWeb上ではよく「・・・」と「・(中黒)」を3つ続けて書く表記を見かけますが、これもできれば「…(3点リーダ)」という専用の1文字で書いたようが良く、それも「……」と2つ続けて1セットとする表記が、出版業界などでは「正式」とされています。絶対にそうしなければならないということはなく、何か考えがあって別のルールを定めるなら良いのですが、特に考えもなく表記が揺れるのは「素人っぽさ」を感じさせてしまいます。

他にも、以下のような点はルールがあったほうが良いでしょう。

  • 数値、金額の表記
  • 年月日、暦の表記(特に理由なく西暦と和暦を混在しない方が望ましいです)
  • 本文以外(見出しや表組内)での読点の有無
  • 記号の表記について(たとえば「★」などの記号の使用を文中で認めるかどうか。文章のトーンに影響するので媒体でルールがあった方が望ましいです)

たとえば弊社の「保険ソクラテス」では、数字の表記については「原則、半角で書き、3ケタごとにカンマを入れる、ただし万の位には漢字の『万』を入れる」としています。

<例>123000円 → 12万3,000円

媒体の特性上、万単位の数字の表記が頻出し、この書き方が読みやすいであろうと考えて、社内で定めたルールとなっています。上記のように金額を表記するときは「~円」としていますが、これも表記ルールであって、媒体によっては「¥~」という書くルールもありうるでしょう。大事なのは、ルールを定めずに混在するのを避けるということです。

4 注意すべき表現、特に事実関係の確認が必要なもの

たとえば「この化粧水はヒアルロン酸を含んだ唯一の商品です」という文は、ヒアルロン酸を含んだ商品が他にひとつでもあれば、その瞬間、ウソになってしまいます。事実でないことを書いてしまうと、クレームや炎上につながるリスクがあるばかりか、場合によっては景品表示法や薬事法といった法令に反するものとみなされるおそれさえあります。

以下のような事実関係の誤りが生じそうな表現は注意しましょう。

  • 唯一表現(例:ただ一つの、~しかない)
  • 最大級表現(例:国内最高、史上初)
  • 断定する表現(例:絶対に、間違いなく)
  • 極端な表現(例:永遠に、完全な)

これらは、特に外注で頼んだ原稿をチェックする際などに気をつけたい点です。こうした表現を見つけたとき、本当にそう言えるのかどうかは、少し神経質に考えましょう。消費者庁の、景品表示法にまつわる情報提供も参考になります。

消費者庁 表示対策 http://www.caa.go.jp/representation/

明確なエビデンスを得られないときや、表示が問題になりそうなときは、次のように表現をやわらげることでリスクを回避します。

唯一の商品です。→数少ない商品です。

最高級の商品です。→最高級の商品のひとつです。

ただし、エビデンスがあって、法的にも許されるならば、言い切ったほうが、文章としてはインパクトが生まれます。可能ならそちらのほうが望ましいので、よく吟味して表現方法を選びましょう。

5 避けたほうがいい言葉

他に注意を要するものとして、以下のようなものがあります。

  • 差別表現
  • 政治・思想・宗教に関する内容
  • 固有名詞・商標など

差別表現については、出版社や放送局では禁止されている表現だけれど、「それは気にしすぎでは?」とか「言葉狩りでは?」と思えるようなものもあります。しかし、明確なポリシーがあって使うのでなければ、無用なリスクを背負う必要はないので、どんなものが差別表現と考えられているのか、一定の知識は持っていたほうが無難です。これについても用字用語辞典が参考になります。

政治・思想・宗教に関する内容も同様で、人によって意見が分かれそうなものには炎上リスクがあるので、どうしても書く必要がないことはあらかじめ書かないのが適した態度です。

固有名詞・商標には法的な権利関係がからんでくることもあります。アフィリエイトサイトなどで、無断で芸能人の名前などを出すと、いわゆるフリーライドとみなされることもあるので注意が必要です。「タレントの○○さんが通っている脱毛サロン!」といった表現でクリックを促すと、「タレントの○○さん」の知名度をタダで利用して利益を得た、とみなされるのがフリーライド(=タダ乗り)という考え方です。これは実際にそのサロンの広告物にそのタレントが出演していたとしても許されないことがあります(タレントサイドとサロンの契約内容によります)。

6 Webで表記する場合の問題

紙の出版物であれば、注意すべきは以上ですが、Webの原稿ですと、

  • 機種依存文字
  • 半角全角の混在

などもチェック項目に入ってきます。

また、ソース上の誤りなども気を配れるとよいと思います。たとえばテキストリンクや強調タグの適用範囲が違うなどといったことです。

原稿を外注で依頼した場合などは、念のためにいわゆるコピーチェックを行うのも、Web時代には必要な校正の一種と言えるでしょう。コピーチェックは1フレーズを検索してみるのが基本的なチェック法ですが、コピーチェック専用のツールも存在していますので必要に応じて活用すると良いと思います。

まとめ~Webに記事をアップする前の校正チェックポイント

ここまで、紹介した内容を以下にまとめました。こうしたことはすぐに取り入れることができるものだと思います。ライティングを行ううえで、少しでも参考になればさいわいです。

チェックポイント チェックの方法・コツ
誤字、脱字 第三者によるチェック。プリントアウトして確認。音読してみる。Wordの校正機能や校正ツールでチェック。
外国語のスペルミス 検索してみる。Wordのスペルチェック機能を利用。
送り仮名の誤り 用字用語辞典などで確認。Wordの校正機能や校正ツールでチェック。
用例、漢字の使い方の誤り 検索してみる。用字用語辞典などで確認。
文法上の誤り(主語と述語の不一致や「ら抜き言葉」など) 国語の知識がないと気づきにくいが、Wordの校正機能や校正ツールのチェックが参考になる。
文体の不統一(「です・ます」と「だ・である」の混在) 音読してみる。
固有名詞(個人名など)・商標 検索してみる(公式サイトやWikipediaなどを確認)。名刺・パンフレットなど紙の資料と引き合わせる。そもそも表記して良いかどうか(フリーライドや失礼にあたらないか)を確認。
住所 検索してみる(公式サイトやWikipediaなどを確認)。名刺・パンフレットなど紙の資料と引き合わせる。
電話番号 検索してみる。実際に電話をかけてみる。
表記揺れ 表記ルールを作成し、確認する。表記ルールをもとに第三者に校正してもらうのも有効。
唯一表現(例:ただ一つの、~しかない) 明確なエビデンスがあるか確認。
最大級表現(例:国内最高、史上初) 明確なエビデンスがあるか確認。
断定する表現(例:絶対に、間違いなく) 明確なエビデンスがあるか確認。
極端な表現(例:永遠に、完全な) 明確なエビデンスがあるか確認。
差別表現 原則として避ける。何が差別表現にあたるかは知識がないと気づきにくいが、用字用語辞典が参考になる。
政治・思想・宗教に関する内容 原則として避ける。
機種依存文字 表記ルールで使用しない文字をリストアップしておき、確認する。プレビュー機能で確認する。
半角全角の混在 Wordの置換機能などを利用する。

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